2007 1018日(木)
於: 京都真言宗総本山東寺講堂前特設舞台
  午後6時30分開演(午後5時30分開場) 8時終演予定
プレリュード「大倉正之助の三番叟」
あらすじ

 舞台はユーラシア大陸の果ての沙漠。にわかの日蝕の闇の中で、真理を求めて旅する女は、どこからともなく現れた羊飼いの老人に呼び止められます。女は、老人とともに不思議な体験をします。そこでは時間も空間も歪み、光さえ重力で曲げられて、見えるはずのない太陽の向こう側の星まで見えだします。
 なぞを残して老人が消えた後、アイ狂言二人が今、都を騒がしている不思議な物語を話します。
 都、下京に住む七つばかりの双子の兄が、十年前天狗にさらわれ、宇宙を旅して昨日戻ってきたのですが、その姿はまだ前髪の子どものままで、双子の弟はすでに成人になっていたというのです。これは双子のパラドックスという、相対性原理で説明される時間の伸び縮み現象です。
 やがて星空の下、容貌魁偉な「茗荷悪尉(みょうがあくじょう)」の面を着けた一石仙人―アインシュタイン博士=ドイツ語「ein Stein」は「1個の石」意味― が登場します。
 相対性原理から導かれる宇宙の生誕から終末までを物語り、子方の務める核子達に舞台狭しと暴れさせた後、「原子の力を戦さや争いには使うな」とのメッセージを残し、一石仙人は重厚な「立廻り」を舞ううちに、ついには宇宙のかなた、ブラックホールに吸い込まれ、現在から未来の時空に消え去るのです。
 今回の東寺での「一石仙人」は、空海とアインシュタインの出会いとも言えます。能の技法は、単純な動きで、宇宙的(コスミック)なものを表現できます。空海の宇宙観を表す立体曼荼羅が納められた「東寺講堂」前でのこの公演で、私の「一石仙人」がどんな宇宙を紡ぎだすのか、大変楽しみです。どうぞ秋半ばの一夜、密教の曼荼羅の場(トポス)で、世界の未来と、人間の運命を思い合わせ、この新作能「一石仙人」をお楽しみ下さい。

                     多田富雄
 おかげさまで、野外能公演を盛会裡に終えることができました。

 かずかずのご支援、ありがとうございました。

主催 :自然科学とリベラル・アーツを統合する会 

東寺講堂前特設舞台 <Chaos>

野に舞い降りた
光と水の舞台で
天と地
過去と未来
カオスとユニバース
未知と既知
時と空間
空海とアインシュタイン が交わる
>舞台解説>
作 /多田富雄  INSLA代表 東京大学名誉教授、免疫学者
演出/清水寛二  観世流シテ方
美術監督・舞台デザイン
   /岩崎敬
   INSLA理事長 環境デザイナー/都市安全学
総括責任者
   /長野一朗  
INSLA理事 団体役員・インテリジェンスリンク代表

■前シテ 羊飼いの老人、後シテ 一石仙人
      清水 寛二
■子方 核子
      加藤愼一朗
■子方 核子
      伊藤 嘉寿
■ツレ 女大学
      味方  玄
■ワキ 従者
      安田  登
■アイ 下京の者
      野村扇丞
■アイ 上京の者
      鍋島 憲
■笛   竹市  学
■小鼓  古賀 裕己
■大鼓  大倉正之助
■太鼓  大川 典良
■地謡  西村 高夫
      中所 宣夫
      柴田  稔
      伊藤 嘉章
      加藤 眞悟
      長川谷晴彦
      梅若 泰志
      長山 桂三
■後見  永島 忠侈
      青木 道喜
      浅見慈一

■プレリュード
      大倉正之助
能楽囃子大倉流大鼓 重要無形文化財総合認定保持者